伊福部昭作品の世界~戦前・戦中作品篇~

-伊福部音楽の揺籃期-

 

伊福部昭先生の創作活動は、1930年代前半、10歳代後半から始まります。

ここでは、現在は失われてしまった、ごく初期のギター作品を皮切りに、戦中(1945年)までに創作された作品を御紹介致します。

 

初期の代表作としては、チェレプニン賞第一席に輝いた「日本狂詩曲」(1935)、その後幾度も違う編成にリライトを試みたライフワーク的作品「ピアノ組曲」、唯一の師チェレプニンに捧げられた「土俗的三連画」、亡き次兄に捧げられた作曲者屈指の代表作「交響譚詩」等が挙げられます。

 

この時期の作品の特徴としては、後期の作品で圧倒的効果を生む、ユニゾンを主体とする雄大な響きよりも、巧妙なオーケストレーションと共に、ポリリズムや東洋的なヘテロフォニーが多用され、 煌びやかな印象の作品が多く見受けられます(日本狂詩曲や土俗的三連画の両端楽章など)。

勿論、伊福部先生独特の北方アジア的な雰囲気を持った、叙情感豊かで雄大な楽案も既に確立されています。

 

また、戦中の「交響譚詩」などは、戦前の作品の特徴と共に、戦後の伊福部作品の特徴を暗示しているようにも感じられます。

 

戦前・戦中作品リスト(作品名をクリックして下さい。作品詳細にリンクしています。)

整理

番号

作曲年

作品名

編成

ジャンル

0-1

1932

平安朝の秋に寄せる三つの歌

Pf.,Vo.

室内楽

 

0-2

1932

ジン―アイヌの火祭―

Guit.

室内楽

 

0-3

1933

ノクチュルヌ(夜想曲)

Guit.

室内楽

 

1

1933

ピアノ組曲

Pf.

室内楽

 

2

1935

日本狂詩曲

三管Orch.

管絃楽曲

 

3

1937

土俗的三連画

室内Orch.

室内楽

 

4

1940

交響舞曲「越天楽」

大編成

バレエ音楽

(機会音楽)

 

5

1941

ピアノと管絃楽のための

協奏風交響曲

Pf.,三管Orch.

管絃楽曲

 

6

1943

交響譚詩―亡兄に捧ぐ―

二管Orch.

管絃楽曲

 

7

1943

Marche Triomphale

2Pf.,三管Orch.

管絃楽曲

 

8

1943

古典風軍樂「吉志舞」

吹奏楽

吹奏楽

 

9

1944

フィリッピン国民に贈る管絃楽序曲

2Pf.,三管Orch.

管絃楽曲

 

10

1944

兵士の序楽

二管Orch.

管絃楽曲

 

11

1944

管絃楽の為の音詩「寒帯林」

二管Orch.

管絃楽曲